自動車保険の対人賠償とは|無制限が基本の理由と補償の範囲

横断歩道の手前の乗用車と盾のマーク、自動車保険の対人賠償を解説する記事のアイキャッチ

当サイトは日本損害保険協会・損害保険料率算出機構・国土交通省・金融庁など公的機関や業界団体の公開情報をもとに編集部が独自に執筆しています。特定の保険会社・保険商品を勧めるものではありません。補償の内容・特約・保険料・等級の扱い・手続きは保険会社や契約によって異なり、制度は改定されることがあります。実際の補償や条件は、ご契約の保険会社・代理店の約款や重要事項説明書で確認してください。記事内には広告を含む場合があります。

保険証券の一番上にある「対人賠償 無制限」。当たり前のように付いているけれど、本当に無制限でないといけないの?と思ったことはありませんか。

結論から言うと、自動車保険の対人賠償は、事故で他人を死傷させた時に、自賠責で足りない分を払う補償です。賠償額が億単位になる事故もあるので、無制限にするのが一般的なんです。

確かめる順番は、まず保険証券で対人賠償の保険金額を見る、次に補償される人の範囲を見る、最後に自賠責の満期が切れていないかを見る、です。

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目次

自動車保険の対人賠償とは?

先に結論

対人賠償責任保険は、車の事故で他人を死傷させ、法律上の損害賠償責任を負った時に支払われる保険です。日本損害保険協会は「自賠責保険を補完する保険」と説明しています。

『自賠責に入っているのに、さらに対人賠償が要るの?』と思う方も多いはずです。

自賠責は、すべての車に加入が義務付けられた強制保険です。ただ、支払いには上限があり、日本損害保険協会も「自賠責だけでは十分とはいえない」としています。

そこで、自賠責の上限を超えた分を払うのが、任意の自動車保険の対人賠償なんです。自動車保険の賠償責任保険には、人に対する対人賠償と、物に対する対物賠償の2つがあります。

損害の種類使う保険
他人の身体(死傷)自賠責+対人賠償
他人の財物(車・建物・ガードレールなど)対物賠償
自分や同乗者のケガ人身傷害・搭乗者傷害・自損事故
相手に対人賠償がなかった時の自分のケガ人身傷害・無保険車傷害
自分の車車両保険

この表は日本損害保険協会の整理をもとにしています。損害保険料率算出機構の資料では、2025年3月末の任意の自動車保険の対人賠償の普及率は75.4%で、共済を合わせると88.6%です。自動車保険の損害賠償の補償は、相手の「人」と「物」で分かれていると覚えておくと分かりやすいですよ。

自動車保険の対人賠償が自賠責の上に乗る二階建ての仕組みを示した図解

対人賠償で支払われるもの

対人賠償は、被害者1名ごとに、保険金額を限度に支払われます。被害者が複数いる時は、1人ずつに保険金額の枠があるイメージです。

香典や見舞金などの臨時費用を支払う商品もあります。こうした上乗せの有無は保険会社によって違うので、約款で確かめてください。

自賠責と任意保険の対人賠償はどう違う?

自賠責とは

自賠責(自動車損害賠償責任保険)とは、人身事故の被害者を救うための強制保険です。任意保険の対人賠償は、その上限を超えた分を払う上乗せの保険で、対象になる事故の範囲や過失の扱いも違います。

『自賠償保険と任意保険って、結局どこが違うの?』という声をよく聞きます。正しくは「自賠責保険」ですが、ここでは中身の違いを見ていきましょう。

比べる点自賠責保険任意保険の対人賠償
加入法律で義務任意
支払いの上限(被害者1名)ケガ120万円、死亡3,000万円、常時介護の後遺障害4,000万円など契約で決めた保険金額(無制限が一般的)
対象になる事故自動車の「運行」による事故自動車の「所有・使用・管理」に起因する事故
家族が被害者の時補償されることがある父母・配偶者・子などは補償しない
被害者の過失7割以上の重大な過失がある時だけ減額過失割合に応じて差し引く(過失相殺)
物の損害対象外対象外(対物賠償で補償)

対人賠償の方が対象になる事故は広い一方で、家族が被害者の時は自賠責の方が補償されうる、という違いがあります。

『任意保険の対人無制限に入っているから、自賠責は要らないのでは?』と考える人もいるかもしれません。

国土交通省によると、対人無制限の任意保険に入っていても、自賠責への加入は必要です。自賠責に入らずに事故を起こすと、任意保険は自賠責の限度額を超えた分しか払われず、限度額までは自分で払うことになります。

よくある失敗

車検のない期間に自賠責の満期を見落としてしまうことです。自賠責に入らずに運転すると、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、違反点数6点の対象になります。証明書の満期日を見ておきましょう。

自賠責と任意保険の違いは自賠責保険と任意保険の違いでもくわしく紹介しています。

賠償額が大きくなる場面から見る、無制限にする理由

ここが大事なところです

人身事故の賠償額は、被害者の年齢や収入、後遺障害の重さによって、億単位になることがあります。保険金額を無制限にしておけば、いくらになっても法律上の賠償責任の額まで払われます。

『そんな大きな額、自分には関係ない』と思いますよね。ただ、賠償額は事故の大きさだけでは決まらないんです。

日本損害保険協会が紹介している高額な判決の例では、2009年の死亡事故で、2011年に横浜地裁が認定した総損害額は5億2,853万円でした。億を超える判決は、ほかにも複数あります。

賠償額がふくらみやすいのは、例えば次のような場面です。

賠償額が大きくなりやすい場面理由
働き盛りの人が亡くなった将来もらえたはずの収入(逸失利益)が大きくなる
重い後遺障害が残った介護の費用や将来の収入が長く続く
一度に何人もけがをさせた被害者1名ごとに賠償が必要になる
自賠責に入っていなかった自賠責で払われたはずの分まで自分で払う

自賠責の死亡の上限は3,000万円です。もし賠償額が1億円なら、残り7,000万円を対人賠償で払うことになります。対人賠償の保険金額が5,000万円だったら、2,000万円は自分で払う計算です。

対人賠償の保険金額で確かめること
  • 対人賠償が「無制限」になっているか
  • 家族で何台か持っている時、全部の車で無制限になっているか
  • 自賠責の証明書の満期日が切れていないか
  • 運転する人が年齢条件・運転者の範囲に入っているか

自賠責に入っていなかった時の計算例

日本損害保険協会は、自賠責に入らずに人身事故を起こした時の例を示しています。

項目金額
賠償額4,500万円
自賠責で払われたはずの額(推定)3,000万円
対人賠償から払われる額1,500万円
自分で払う額3,000万円

対人賠償があっても、自賠責で払われたはずの3,000万円は差し引かれます。自賠責の満期切れが怖いのは、この差し引きがあるからなんです。

「無制限」は何でも払うという意味ではない

『無制限なら、10億円でも払ってくれるの?』という疑問もありますよね。

日本損害保険協会によると、保険金額無制限とは、支払いの上限がないという意味です。加害者が負う法律上の賠償責任の額を超えて払う、という意味ではありません。

つまり、裁判や示談で決まった賠償額まで、上限なく払われるということです。相手の言い値がそのまま払われるわけではないので、そこは安心してください。

自動車保険のレッカー無制限・ロードサービス無制限とは別の話

「無制限」という言葉は、レッカーやロードサービスの説明でも見かけることがあります。こちらは運べる距離などのサービスの範囲の話で、対人賠償の無制限とはまったく別のものです。

ロードサービスの距離や条件は保険会社と契約で違います。くわしくは自動車保険のレッカーで紹介しています。

対人賠償で補償される人・されない人

先に結論

対人賠償で補償されるのは「他人」を死傷させた時です。記名被保険者や運転者の父母・配偶者・子などが被害者の時は、対人賠償からは支払われません。家族のケガは人身傷害などで備えます。

『同乗していた家族がけがをしたら、対人賠償で払われるの?』という相談はとても多いです。

日本損害保険協会によると、対人賠償で被保険者(賠償する側として補償される人)になるのは次の人です。

  • 記名被保険者
  • 契約の車を使っている配偶者・同居の親族・別居の未婚の子
  • 記名被保険者の承諾を得て、契約の車を使っている人
  • 記名被保険者の使用者(勤め先など)

一方、被害者が次の人の場合は、対人賠償から支払われません。

被害者対人賠償備えになる補償
同乗していた友人・知人対象になりうる人身傷害・搭乗者傷害も
記名被保険者・運転者の配偶者支払われない人身傷害・搭乗者傷害
記名被保険者・運転者の父母・子支払われない人身傷害・搭乗者傷害
歩行者や相手の車の人対象になる自賠責で払われる分を超えた額を対人賠償で

例えばこんな場面です。自分の車を友達に運転させていて、その友達が自分の父にけがをさせてしまったとします。

被害者は記名被保険者の父なので、対人賠償からは支払われないことになります。自賠責では補償されることがあるので、保険会社に相談してみてください。

友人に車を貸した時は?

記名被保険者の承諾を得て車を使う人も、対人賠償の被保険者になります。ただ、運転者の範囲を本人・配偶者限定や家族限定にしていると、友人は範囲に入らず補償されません。

年齢条件は、同居の親族以外が運転する場合はかからないのが一般的です。貸す前に、運転者の範囲だけは証券で確かめておきましょう。

「ちょっと車を貸してくれない?」

「いいよ。でも、うちの保険は家族限定だから、念のため確かめてからね」

こんなひと言があるだけで、事故の時に困る場面を減らせます。

支払われないそのほかの場合

日本損害保険協会が挙げる、対人賠償が支払われない主な場合は次のとおりです。

  • 故意による事故
  • 戦争・暴動による事故
  • 地震・噴火・津波、台風・洪水・高潮による事故
  • 競技・曲技・試験のための使用中の事故

一方で、無免許運転や酒気帯び運転などの事故でも、被害者を救う観点から対人賠償は支払われます。ただし、運転者本人のけがや車の損害は支払われないので、「飲酒でも保険が全部出る」わけではありません。

対人賠償を使ったら等級はどうなる?

先に結論

対人賠償から保険金が支払われると、1事故につき3等級下がり、3年間は事故有の低い割引率になるのが基本です。

『対人保険を使うと等級はいくつ下がるの?』という疑問への答えは、日本損害保険協会の説明では「3等級ダウン」です。

等級の考え方内容
下がる数保険金を受け取る事故1件につき3等級
低い割引率の期間3年間(事故有係数適用期間)
期間の上限6年

対人賠償保険を使った時の等級の下がり方は、対物賠償や車両保険を使った時と同じ3等級ダウンが基本です。同じ事故で対人と対物の両方を使っても、事故1件として数えます。

参考純率の例では、20等級の割引率は無事故で63%、事故有で51%です。実際の割引率は保険会社によって違いますが、使った後の保険料の増え方は保険会社に試算してもらえます。

例えばこんな場面です。16等級の人が交差点で歩行者にけがをさせ、対人賠償から保険金が支払われたとします。翌年は13等級になり、3年間は事故有の割引率で計算されます。

『3年たてば元に戻るの?』と思いますよね。事故がなければ毎年1等級ずつ上がり、事故有の期間が終われば無事故の割引率に戻ります。

等級の下がり方は事故で等級はいくつ下がる?でくわしく紹介しています。

対人賠償を使った時に等級が下がる仕組みと低い割引率が続く期間を示した図解

自動車保険の対人賠償についてよくある相談

先に結論

「同乗の家族も対象?」「無制限って10億円でも出る?」「自賠責の範囲内でも等級は下がる?」という相談がよく読まれています。

知恵袋で多く読まれている相談を、要約して紹介しますね。

「対人賠償は、自分の車に乗っている家族や友人のけがも対象?」

一番多く読まれている相談です。友人や知人なら、対人賠償の対象になりえます。

一方、記名被保険者や運転者の配偶者・父母・子は対象外です。家族のけがには、人身傷害や搭乗者傷害で備えることになります。

人身傷害は、過失割合で減らされずに約款の基準で計算した損害額を受け取れる補償です。家族を乗せることが多いなら、人身傷害の有無を確かめておくと安心です。

「対人対物は無制限とよく聞くけど、死亡事故を起こしたら自分の負担はゼロ?」

法律上の賠償責任の額までは、上限なく保険から払われます。その意味では、賠償金の支払いについての心配は大きく減ります。

ただ、保険でまかなえるのはお金の面だけです。日本損害保険協会も、示談交渉を保険会社に任せても、加害者には被害者を見舞い、誠実に謝罪する道義的な責任があるとしています。刑事上・行政上の責任も別にあります。

「対人賠償しか使わず、自賠責の範囲内の金額だった。それでも等級は下がる?」

『少額だったのに等級が下がるの?』と気になりますよね。

対人賠償から保険金が支払われれば、3等級ダウンの事故になるのが基本です。自賠責から支払われる分だけで済んだ場合の扱いは、保険会社に確かめるのが確実です。

日本損害保険協会は、少額の保険金を請求すると、翌年以降の保険料の増え方の方が大きくなる場合があるとも説明しています。保険会社と相談しながら決めてみてください。

「対人無制限に入っていれば、火災保険の個人賠償責任は要らない?」

これも多く読まれている相談です。答えは、対人賠償と個人賠償責任は守る範囲が違う、です。

対人賠償は車の事故で他人を死傷させた時の補償です。個人賠償責任特約は、自転車で人にけがをさせたなど、車の事故を除く日常生活の事故で賠償責任を負った時の補償です。

対人賠償(自動車保険)
  • 車の所有・使用・管理に起因する事故
  • 他人を死傷させた時の賠償
  • 物の損害は対物賠償で
個人賠償責任特約
  • 車の事故を除く日常生活の事故
  • 他人にけがをさせた、物を壊した時の賠償
  • 同居の親族への賠償は対象外

対人無制限があっても、自転車の事故には使えません。一方、火災保険と自動車保険の両方に個人賠償責任の特約があるなら、どちらか一方で足りることもあります。くわしくは個人賠償責任特約とはで紹介しています。

保険料を見直す時に、車のことも考えておく

先に結論

対人賠償は削る所ではありません。保険料の負担が重い時は、ほかの補償や車そのものとのつり合いで考えましょう。

『保険料を下げたいから、対人を1億円にしようかな』と考えるのはおすすめしません。賠償額が億を超える例がある以上、ここを削るのは割に合わないからです。

見直すなら、車両保険の金額や特約の重なりなど、ほかの所から見ていくのが順番です。

見直す順番見るところ
1. 特約の重なり家族の別の契約や火災保険と、弁護士費用特約・個人賠償責任特約が重なっていないか
2. 運転者の範囲・年齢条件実際に運転する人に合わせて絞れるか
3. 車両保険車の価値に対して金額や免責金額が合っているか
4. 対人・対物賠償ここは無制限のまま残す

日本損害保険協会は、補償の重なりの例を挙げています。家族の2つの自動車保険の両方に弁護士費用特約が付いている、火災保険と自動車保険の両方に個人賠償責任の特約が付いている、といったケースです。片方の保険料が補償につながらない「無駄払い」になることもあるので、まずここから見てみてください。

保険料や修理費の負担をきっかけに車を手放すことを考えるなら、下取りだけでなく買取店に売る方法もあります。古い車でも値段がつくことがあるので、先に今の車の相場を知っておくと判断しやすくなります。

手放す時は、保険を解約するか、中断証明書で等級を残すか、次の車に車両入替をするかも決めておきましょう。手順は車を売ったら自動車保険はどうする?で紹介しています。

新しい車に乗り換える前に、今の車の手放し方も決めておく

新しい車への乗り換えを考えているなら、今の車をどうするかも先に考えておくと安心です。

『新しい車のことで頭がいっぱいで、そこまで考えていなかった』という方も多いですよね。

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よくある質問

自動車保険の対人賠償とは何ですか?

車の事故で他人を死傷させ、法律上の損害賠償責任を負った時に、自賠責で足りない分を支払う保険です。被害者1名ごとに保険金額を限度に支払われます。

任意保険の対人賠償は無制限にした方がいいですか?

人身事故の賠償額は億単位になることがあり、無制限にするのが一般的です。無制限は、法律上の賠償責任の額まで上限なく払うという意味です。

自賠責保険とは何ですか?任意保険があれば要りませんか?

自賠責は人身事故の被害者を救うための強制保険で、すべての車に加入が義務付けられています。任意保険の対人無制限に入っていても、自賠責への加入は必要です。

対人賠償の保険金の支払いは、いつまでに請求すればいいですか?

日本損害保険協会によると、対人賠償の保険金を請求する権利は、判決・和解・調停・示談で賠償額が確定した翌日から3年で消えます。事故の後は早めに保険会社へ連絡しておきましょう。

被害者は加害者の保険会社に直接請求できますか?

一定の要件のもとで、被害者は加害者の保険会社に損害賠償額を直接請求できます。自賠責の被害者請求とは性質が違う、約款上の権利です。

まとめ

この記事の要点
  • 対人賠償は、他人を死傷させた時に自賠責で足りない分を払う上乗せの保険
  • 賠償額が億単位になる例があり、無制限にするのが一般的
  • 無制限は、法律上の賠償責任の額まで上限なく払うという意味
  • 記名被保険者や運転者の配偶者・父母・子が被害者の時は対象外
  • 対人賠償を使うと3等級ダウンが基本。自賠責への加入も別に必要
自動車保険ナビ

自動車保険ナビ 編集部

自動車保険(任意保険)の補償と特約、等級の仕組み、保険料の決まり方、見積もりと乗り換え、事故の時の流れ、車を買い替える・売る・手放す時の保険の扱いまで、公的機関や業界団体の公開情報をもとにまとめている情報サイトです。 公式サイト

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